筆まつり

筆まつりとは

熊野町は、江戸時代から伝わる筆の生産を産業の中心として「筆の都」として栄えてきた町で、書道筆・画筆・化粧筆・その他、どんな筆でもそろう日本一の筆の都です。天保年間には筆作りが始まり、日本一の生産地に育てた先人達の労苦に感謝し、ますますの発展を願って、例年、秋分の日に「筆まつり」の祭典を行うようになりました。
「筆の都」熊野町の人々が、筆の文化に携わる人々や筆を与えてくれる自然に対して、感謝の気持ちを込めて開催するイベントとして、80年以上も開催されてきました。

イベントでは、神事「筆供養」をはじめ、大作席書、筆の市、競書大会、フォトコンテスト、彼岸船・筆踊り、ふれあいステージなど、様々な催しが開催され、毎年5万人ほどの来場者でにぎわいます。
神事「筆供養」は、筆づくりのため毛を提供してくれた動物たちへの感謝と供養と、使い古されて役目を終えた筆に対する感謝の気持ちを込めて、毎年何千本もの筆を神聖な火の中に投じます。
筆供養は、筆の街熊野町のシンボルとして、榊山公園に建っている筆塚の傍で、役目を終え全国から筆の街熊野町へ送り返されてきた筆を焼いて供養します。

筆塚の歴史を知ると、筆まつりの意味や歴史をより一層楽しむことができます。

筆塚【ふでづか】

昭和40年(1965)9月に筆精と祖先の遺徳に感謝を込め、建てられました。この塚の礎石には、後に初代熊野筆伝統工芸士となる上馬場正生氏、実森盛登氏ら熊野の筆司たちが、精魂込めて作った筆が、筆精として安置されています。

筆塚の文字は、建立計画の持ち上がった当時の内閣総理大臣であった池田隼人氏の揮毫によるものです。この書が池田氏の絶筆となりました。

《筆塚と筆供養の歴史》

昭和30年初め

当時から日本一の筆産地としてその名を知られていた熊野町。

“熊野は日本一の筆の産地である。それが故、筆を作るために多くの獣毛を使う。その毛の良し悪しにより筆の品質も変わる。良い筆を作ることができることに感謝する為、獣魂を仏前で供養をしよう”との思いで、原毛を扱う業者が中心となって、獣魂供養が始まりました。

昭和34年(1959)第一回熊野製筆原毛獣魂供養法要

熊野町は、浄土真宗の信者が多く住む地域です。供養のため、熊野町周辺の寺からではなく、浄土真宗の本山である本願寺から招くという、当時としては大変大きな規模の法要となりました。以降、熊野町内の光教坊および西光寺(いずれも浄土真宗)において、年に一度獣魂供養が行われることとなります。(なお、浄土真宗には“魂”という概念がない為、昭和47年(1972)より獣魂供養から“筆供養法要”と名称が改められました。)

昭和36年(1961)『一如会』発足

獣魂供養の主体となる会の名称が、仏教のことばにある『一如』にちなみ、『一如会』となりました。後に400余りの会員を有することになる一如会の発足です。発足当時の主要メンバーは19名ほど。仏前法要のみならず、神前にも毛筆元祖をまつり、遺徳者を讃えるため、筆塚を建設することを計画しました。

昭和39年(1964)『筆塚建立委員会』発足

一如会のメンバーが中心となり、筆塚建立委員会が発足。建立のための資金集めと、碑に使用する石の調査が始まりました。長い時間を費やし、広島県内のみならず、山陰地方にまで広く石の調査が行われ、最終的に広島県内の野呂山周辺の石を使用することとし、石の大きさや形が適しており、搬出も可能な場所である川尻町(現呉市。熊野筆と同じく、経済産業省指定の伝統的工芸品川尻筆の産地である)より、石を持ち帰ることとなりました。

当時川尻町へ搬出の許可を申請したところ“同じ筆の産地として筆塚建立に協力する”と、無償で石の提供を受けることができました。かくして推測20トンを超えるであろう石はトラックに積まれ、熊野町へ搬入されたのでした。

昭和40年(1965)9月 筆塚完成

のちの昭和43年(1968)一如会から熊野町へ筆塚の移管が行われました.

昭和50年(1975)

筆まつりにおける、筆塚前での神事『筆供養』がはじまる。

この年の前年(昭和49年(1974))『伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)』が施行され、昭和50年5月に、筆としては全国で初めて国の伝統的工芸品に指定されました。この慶事を受け、昭和10年(1935)より行われていた筆まつりを盛大に開催しようという機運が高まり、熊野町商工会青年部内に実行委員会が組織され、例年の催事に加え、新たに筆塚の前で神事として『筆供養』が行われることとなりました。

それ以来、毎年秋分の日に『筆まつり』が行われることとなりました。

筆まつりについて詳しくはこちら↓
https://www.fudematsuri.jp/

熊野バーチャル筆まつりとは

長年続いてきた『筆まつり』ですが、2020年、第86回目の『筆まつり』の開催を予定していましたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、残念ながら、開催中止となりました。
多くの人が楽しみにしていたイベントを、何とか実現できないかと試行錯誤し、熊野筆事業協同組合の青年部を中心に、商工会や町役場の有志が集まり、熊野バーチャル筆まつり実行委員会を立ち上げ、オンラインイベント『熊野バーチャル筆まつり』を開催しました。

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